ファーストコンタクト

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 定時アガリの時間。 「臼井さん、さっきはぶつかってゴメンな」 「不慮の事故です、お気になさらず」  そのまま、カバンを持って帰ろうとする臼井さん。 「あ、せめて晩飯だけでも奢らせてくれないか?」  引き止めた同僚に一瞬振り返って、 「いえ、結構です。それでは」  スタスタと帰ってしまった。 「臼井さん、手強いな‥‥宮原、何か話とかできたか?」 「はい。書類拾うのを手伝って‥‥『ありがとう』って言ってもらえました。ありがとうございます」 「それだけか‥‥ドサクサに紛れて手を触れさせるとかしろよ。意識させて、トキメかせないと恋愛になんねーぞ」 「あ、そういう手が‥‥もう手伝うだけでも緊張しちゃって」  もっと積極的にならないと! 「ま、一歩。半歩くらいか、前進できたんじゃねーか?」 「はい。あ、良かったらコーヒーでも」 「有り難く御馳走になるか」  お互い帰り支度を済ませ、社内の自販でコーヒーを一緒に飲む。 「ふぅ、仕事疲れに染み渡るな‥‥ビールでも一緒に、って宮原まだ19だっけ?」 「はい」 「そっか。んじゃ、ご馳走さん」 「ありがとうございます」
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