45人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「…そろそろ、離れた方が良いと思うけど。ソウタ苦しそうだし。」
後ろから声をかけた俺に二人同時に振り向く
「あっ!カイトお疲れ!今大事な所だからちょっと待ってて!」
「大事な所って、あなたね…」
ソウタの項垂れ具合がまた面白いんだよな、二人が絡んでる時って
「このままだと、二人でキスでもしうな雰囲気だけど?」
からかう様に言った俺に嬉しそうにニカッと笑うミヤビ
「しちゃう?!ソウタ、ちゅーだって!」
すこし離れたソウタの体をまたわざとらしく引き寄せて、唇を尖らせる
「はっ?!お前、やめろ!何すんだ!」
慌て出すソウタの両腕を掴んで制止する俺。
「もう、ここまで来たら覚悟した方が良いんじゃない?」
「え?!何?!カイト、そっち派なわけ?!」
「カイト、話がわかる!」
ミヤビの豪快な笑い声が夜の波音に心地良く響いて、何となく切ない心が癒された気がした。
…ソウタだけじゃない。
こうやって俺もミヤビになんだかんだ癒されてる
出会いは確かに強烈だったけど、やっぱり会えて良かったよな、この人に。
「で、ヤマサンさんは?」
「ああ、あまりにもミヤビが落ち込んでるから、『ミヤビ連れて海でも行ってきたら?』って言われてさ。多分、先に戻ったんじゃないかな」
「そっか…」
ソウタの隣に改めて腰を下ろして、夜空を見上げる。
はるか彼方、水平線の向こうに見える船の灯りが心もとなく光を発してた。
「カケルさんさ」
ぽつりと言葉を零した俺に、二人の瞳が揺れる。
「や、まあ気のせいだろうけどね。
なんつーか、上手く言えないんだけど、違和感がある気がしてさ」
あんだけ優しく慰めて貰ってこんな事言うのもなんだけどね
強い風が横から吹き付けたらソウタのフッて笑い声がそれに乗っかった
「おじさんがいればカケルは大丈夫でしょ」
そうだよな…ヤマサンがいれば。
本当は指示を無視して、事務所に戻る事もちらっと考えたんだけど
ちょうど良かったのかも、俺がここに足を運んで
「とは言え、ぼちぼち戻ります?
色々話さなきゃいけない事もお互いありそうだし」
俺の顔を覗き込んだ柔らかい笑顔
俺の心ん中全部見透かされてんなって思ったら、照れくさくなって
「だね。」って言葉少なに答えると二人と同時に立ち上がった。
.
最初のコメントを投稿しよう!