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◇
ッポーン…コンコン
ドアベルとノック音が聞こえて、微睡みの中から意識を浮かばせる。
靄のかかってる窓の外の景色
そこから微かに汽笛の音が聞こえて来た。
朝…か。
“アシナガオジサン”…居なくなったんだ。
「ん…っう…」
けだるい身体を起き上がらせたら、頭が割れる様に痛む
はだけたガウンを整えながらヨロヨロとドアを開けると
朝食を運んで来てくれた、目深に帽子を被ってるボーイさんをいつも通り部屋へ入る様に促した。
奥まで入ったその瞬間、ボーイさんがキョロキョロし出す。
「すげーとこに泊まってんだな。」
空耳が聞こえたかと思った。
帽子を取ったその人はニッと唇の端をあげてて
不意に腰をグッと引き寄せられたら、唇が塞がれた。
「カイト…」
慌ててその肩をグッと押したら、今度は耳朶にキスが降って来る。
「あのくそオヤジに触られたとこ全部上書きしてやるよ」
”くそオヤジ”って…
「ちょっ…と…」
ガウンの隙間からスルリと掌を差し込んで這わせて行くカイト
「やめてって!」
強く押すと同時に、平手を繰り出してた。
バチーン!
もの凄い音が鳴り響く室内
「ってえ…」
しまった。
咄嗟に思い出した数年前の出来事
…またやってしまった。
「ご、ごめん、つい…。」
「お前さ、手加減とか無いわけ?」
視界がぼやけた。
紛れもない
目の前に居るのは、カイトだ。
頬を暖かい雫が伝わる。
また身体をギュッと包まれた。
「帰ろうぜ」
余計に込み上げて来る涙
「明日、ミヤビが来るから指示に従って?」
「っ!ダメ!私、会えないよ、探偵事務所の皆に。だって…んんっ」
話出したらまた唇が塞がれる
「…お前は何も考えんな。ただ、俺達と一緒にいりゃいいんだよ」
視界に皆の顔が浮かんだら余計に涙が溢れ出した。
「…『俺と』って言えない所がちょっと気に食わねえけど」
それを親指で拭うと苦笑いするカイト
「服必要だな。や、俺だけならいいんだけどさ」
「カイトだけならもっと悪い」
今度は自分で目元を拭う
「んだよ、元気じゃん」
不意に両頬をぎゅっと掴まれた。
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