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◇
カイトが来た次の日、予告通り今度はミヤビがベルボーイとして入って来た。
「ミヅキちゃん!」
久しぶりのその笑顔が思わず滲む。
「ミヤビ…あの…」
どんな顔して会えばいいか昨日からずっと悩んでた。
「あ!泣いたらダメだって言ったじゃん!」
頬をそっと優しく包み込む掌の温もりに余計涙がこぼれて来る。
「ミヤビ…ごめんね?あのね…」
言葉に詰まってたら、おでこに柔らかい感触を味わって言葉を思わず呑み込んだ。
「泣いたらチューするって言ったでしょ?」
目元を拭われたら優しい笑みがそこに現れて
「ミヅキちゃんごめんね?俺達色々ミヅキちゃんの秘密知っちゃった。」
黒目の大きい綺麗な瞳に、安心を覚えた。
「でね?俺、決めたの!
ミヅキちゃん、俺の事笑顔にしてくれたでしょ?
だから、今度は俺がミヅキちゃんの事笑顔にすんの!」
ニカッて白い歯見せて笑うミヤビがまたぼやける。
「あっ!泣いちゃダメだってば!しちゃうよ?口に。ちゅーって!」
おでこをこつんてつけられたら
「…すんな。さっさと着替えを渡せよ。そんでもって、早くミヅキをこっちに持ち上げろ。」
途端に上から降って来るもの凄い不機嫌そうな声
え?!カイト?!
見上げた天井の通気口からあからさまに眉をひそめるカイトが顔を出してた。
「もう、カイトは!折角の感動の再会なのに」
あっけに取られてたら、抱き上げられてふわりと身体が浮く
上の換気口からカイトの腕が伸びて来た。
「昨日俺がやっといたから、必要ねえ。
ってか、着替えを渡して欲しかったんですけど。」
「あっ!やべっ!そっか。」
後から通気口に入って来たミヤビが肩を竦めて舌を出したら
「どうすんのよ。ここで着替えられんかな?結構狭いんですけど。」
一番先頭からそんな飽きれた様な声。
ソウタ…
目が合ったら口角をキュっとあげて微笑まれた。
「んじゃ、とりあえず着替えられる分だけ着替えたら?」
ソウタのすぐ後ろのヤマサンさんが笑う。
皆、いつもと変わらない…
その気遣いに心がキュッと掴まれた。
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