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カイトがお茶を入れてくれている間に持って帰って来た荷物を整理してこたつに入る。
目の前に置かれた湯のみを手に取ったら、そこから立つ湯気とお茶の香りが気持ちを不思議と落ち着かせてくれた。
「ねえ、今忙しいんでしょ?」
「ああ・・・まあね。」
それ以上何も言わないカイトにふと感じた違和感
「カイト、もしかして園長…逃げたの?」
湯のみに口をつけたまま、私をちらりとみるカイト
「ま、いずれバレるもんな。」
息をはき出した。
「あいつは殺された。」
「…え?」
頭の中が真っ白になる
ドキンドキンと脈が早く強く打って傷口に響いて来た。
「カ、カイト…」
「勘違いすんなよ?ミヤビが殺ったワケじゃないから。
お前が倒れた後、スキンヘッドにサングラスの奴が現れたんだよ。そいつが園長かっさらってったの。」
「スキンヘッドにサングラス…?それってもしかして!」
「ああ…多分だけど、真下が会ってた奴だと思う。」
眉間に皺が寄って悔しそうな表情に変わったカイトの瞳が、珍しく戸惑いの色を纏ってた。
このカイトの表情…
「そいつの事、取り逃がした…の?」
お茶の水面が波立って湯のみを覆うその掌に力が入ったのが分かる。
「…動けなかった。
対面しただけで、レベルが違うって感じる程の殺気だった。」
そんなに…?
カイトだって相当な使い手だし他の4人だって強いはずなのに。
それを凌駕するって。
「ねえ、そいつが園長を殺したの?」
「それが定かじゃないんだわ。
あの次の日さ、兵藤さんから横浜のお前が有村達に拉致られてた埠頭倉庫で遺体が見つかったって連絡来たんだ。」
カイトの真っすぐな瞳が顔色の悪くなった私を心配そうに映してる。
「園長だけじゃない。有村とつるんでいた奴らも一緒に。まあ、有村自身は警察にいたから手、出せないけどな、どのみち。
とにかく警察はつるんでたって言う所から、『仲間割れ』って事で処理したらしい。」
そんなお互い殺しあう関係とは思えなかったけどな…
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