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◇
事務所に戻り、事の成り行きを兵藤さんに話して、ソウタが兵藤さんと出掛けていくのを見送った後に
急いで報告書をまとめた。
まとめ終わってパソコンから目を放したら
そこでようやく、ヤマサンがいないのに気が付いた。
…いつの間に出てったんだ?
いつもは俺が終わるまで隣に寝てんのに。
何となく屋上にいんじゃねーかなって気がして行ってみたらビンゴ
近づいた俺に胡座をかいたまま「お疲れ。」って笑った。
「ヤマサン、寒くない?こんなとこにいたら。」
「うん、寒ぃ…」
よいしょって立ち上がるヤマサン
「カケルの報告書、すげーね。俺でも分かりやすかった。」
ヤマサンが抱えてるのは、この事務所を立ち上げてから今までの事件をまとめた報告書で。
「これ、読み返してたの?」
「うん」
「そっか。で?何か分かった?」
ファイルを半分手に取った。
「うん」
言葉少なに頷きを繰り返すヤマサン
「…もうすぐ、カケルを解放してあげられるかな。」
その奥の深いブラウンの瞳が優しく揺れる。
「ヤマサン、それはさ…」
思わずそこで言いそうになった言葉を呑み込んだ。
…多分喜ばないよね、この人は。
俺が、『あの件』が解決した後も一緒に探偵やっていたいなんて言ってもさ。
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