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掴んだ胸ぐらをより手繰り寄せるカイトに
「ミヅキを散々苦しめやがって…」
「い、いくらだ!いくらでも払うぞ!お前達皆、一生ラクして暮らせるだけのお金、与えてやる!」
「えー…俺、金なんてそこそこあればいい。」
ヤマサンが興味なさげにくわっと欠伸をする。
「俺、お金より鍋に唐揚げ満タンがいいな、ミヅキちゃん!
でも、取っ手に気をつけてよね!あそこベタベタになりやすいから!」
ミヤビがなぜか、私を見ながら目を輝かせる。
あ、私に作って欲しいって事?
「あなた達、平和だねぇ…」
呆れたソウタがカケルさんを見た。
それを受けてカケルさんが余裕の笑みを浮かべる。
「どうやら、交渉は破綻のようですね。」
「っ!後悔するぞ!
ミヅキ!いつかお前を絶対手に入れてやる!」
悔しさに顔を歪ませる“アシナガオジサン”が言葉を吐き捨てたらカイトが目を細めた。
「お前、救えねーな」
頬に鉄拳をおみまいして気絶させるとあっけにとられてる私の前まで来て、しゃがみ込んだ。
「お前もほどかねーとな」
「な、何で皆、縄がほどけてるの?」
「ああ、それは…」
話し始めたカイトの後ろで、グラサン男がヨロヨロと立ち上がり大きな影を作った。
「カイト!」
ミヤビのかけ声にカイトが咄嗟に足を回してその大木の様な腱を捕らえたのと同時にミヤビの足がグラサン男の左頬に直撃する
「ぐあっ…」
痛みでかがみ込むグラサン男
チャンス…
一瞬目を閉じたら、脳裏を掠めるじいちゃんの笑顔
…力を貸してね。
結わかれた腕をそのままに、立ち上がった反動を利用して跳ね上がると足を振り上げる
そのまま振り下ろした踵はグラサン男の項を直撃した。
「があ…」
ドサリとその大きな身体が倒れ込む。
「ミヅキちゃんやるぅ!」
ミヤビが目を輝かせて褒めてくれると
「お前、相変わらずすげー踵落としすんな」
カイトが縄をほどきながら苦笑い
「久しぶりに見たぞ…ミヅキちゃんの男前踵落とし」
「あ、おじさん、一回見てんだっけ。」
「あれが出ると、俺の出番はねえ」
「ぐ…っくそっ」
これだけダメージを与えてもまだ意識のあるグラサン男の前にしゃがみ込むヤマサン
「な?あんだろ?金や権力より大事で、おもしれーもん。」
その項に手刀を入れ、完全に気絶させた。
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