第一部:宝玉捜索編

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「止まれっ!!」 レグルスは陽動作戦の為に将軍の後について敵へと近付く途中、敵の偵察隊に遭遇したらしく、将軍が合図を送る。その瞬間にレグルスたちは一寸の狂いもなく同時に停止した。 「・・・よし、行くぞ」  敵を何とか無事に見過ごし、敵の本隊に近づく。少しずつ、慎重に近づき、正面へ出る。 「今だ!!進め~~!!!」 ついに、作戦は実行された。レグルスも続いて必死に奮闘する。本気で戦う必要はどこにもないはずだが、やはり本番の戦となると本気にならざるを得ない状況になるのだ。 「はあぁっ!!!」  ひたすら目の前の敵を、罪無き民たちを斬った。罪は無くても今は敵。殺さなければ自分が死ぬ。そうなればセラとの約束も果たせなくなる。 「く・・・撤退せよ!!」  将軍は機を見て合図を出し、レグルスらを引き連れ来た道を戻る。勢いづいた敵軍は策とも覚えず追いかけてきた。敵の地を蹴る音がレグルスの耳を突く。その瞬間、彼の中には恐怖の感情が湧き上がってきた。それでも必死に走った。 「た・・・助かった・・・・」 何とか生きて戻れた。陽動であるとは言え、やはり恐怖の念は拭えないものだと改めて実感する。少し一人になりたかった。一人で落ち着いてこよう。そう思って彼は一人、近くの森の中へ入っていく。そこは虫の声一つ聞こえない幻想のような世界だった。しかし、すぐに音の世界が混ざり込む。 (ガサッ、ガサッ) 草の揺れる音。何かが来る、そう思った瞬間、剣を振りかざした男がこちらへ斬りかかってくる。 「くっ・・・!?」  何とか攻撃を受け止めてつばぜり合いの金属音が森の中に鈍く響く。いくらか剣を交えた末、一瞬の隙を突いてレグルスは襲ってきた男の心臓を貫いた。一瞬で大地は朱に染まり、森の中に血溜まりが出来た。 「勝った、のか・・・」  男が動かなくなったのを確認して剣を収めた。しかし、ふと男の懐に何かが光っているのが見える。興味が沸いた。正体が何なのかをこの目で確かめたかった。理由があるわけではなく、本当に何となくだ。 そして、レグルスはその光るものを手に取った――――――。
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