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 俺は、ぎゃー、と言って耳をふさぐ。  子どもの頃から一緒にいるのだ。両親のそーゆーの以上に生々しい。無理、勘弁。 「なー、頼むよ。ドーナツもっと作ってやっから」 「ついこの間まで『ちんちんとか意味わかんねー』って言ってたくせに、どうゆうわけ!?」  言うとユキは唇を噛んだ。 「……ハルと、次に進みたい」  俺は再びのけぞった。マジか。 「っなんだそれ!じゃあハルにしてもらえよ!」 「ハルには『権限』ないってわかってるくせに!」  俺は頭を抱えた。  ハルがユキをとうとう動かしてしまった。いつか、いつかこんな日が来るのではないかと恐れていた。二人が惹かれ合うのを俺は阻止できなかった。出会った日から、それは始まっていたというのに。  ユキが我が家に来た日を、鮮明に覚えている。  今でこそAIも随分普及したけど、俺の幼少時は、今よりもっと高価で、珍しいものだった。近所で有名な問題児、ハルが見物に来るのを拒まなかったのは、勝者の余裕だ。ハルんちにはアンドロイドは来ない。うちには来る。つまり見せびらかしたかった。  どーんとリビングに横たえられた箱には、保湿剤と一緒に半透明のカバーでラッピングされているユキが横たわっていた。  開封すると、まずユキの顔が現れた。長い睫に縁取られた目を閉じたままゆっくりと起き上がる。  セッティング担当者が「外気にふれると徐々に起動しますんで」と言ってるそばから、「うっわー、生きてるみてー」とハルが身を乗り出し、手を伸ばした。  その場の全員が固唾を飲んで覚醒しようとするユキを見守っているというのに、ハルは、あろうことか、汚い手でユキの美しい頬にふれた。  すると次の瞬間、覚醒したアンドロイドは「権限ねーくせに、さわんじゃねえチビ」と言って、ハルの手を払いのけた。驚いて目が真ん丸になっているハルを、ユキが睨みつけている。
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