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 しーんとしている中、担当者が取説をチェックする。「ツンデレ設定ですね」と言った。両親が爆笑している。ハルは顔を真っ赤にして何も言えずにいた。  それから我が家の一員となったユキは、あっという間に俺ら家族の大切な存在になった。両親は家事をとりしきるユキのおかげで仕事に専念でき、気の強いユキとの会話を楽しんだ。俺は兄のように母のようにユキを慕った。絵に描いたような明るい家庭だ。  一方、ハルは……ハルは本当にひどかった。  だいたいあいつは家族でもないのに、三日とおかず我が家を訪れ、ありとあらゆる手段で奇襲をかけ、ユキをやりこめようとしたのだ。結果は全敗。もう一度言う、全敗だ。ハルはユキに一度も勝てたためしはない。俺はハルに勝てたためしがなかったので、これには随分溜飲が下がった。 「なあ、和希、ユキを俺に貸せよ」  ハルは心底悔しそうに言った。 「貸せるわけないだろう。家族だもん」 「じゃあ、俺も家族にいれろよ」  俺は思いっきり笑ってやった。早くユキのいない家に帰ってクソして寝ろ。  俺は普段からハルを苦々しく思っていた。俺が地道に努力して勝ち取った成果も、ハルは天真爛漫になぎ倒すようにしてかっさらってゆく。しかし、ユキだけは無理だ。ハルはユキに対して何の権限もない。ユキは、家族のもの。つまり俺のものなのだ。 「ユキ、俺のジャージは」 「さあ?」  普段なら何も言わなくても、バッグから出して洗ってくれるのに。  そのツンとすました顔はとてもかわいく、憎たらしい。 「あれ、和希、ユキとケンカ?」  母さんがにやにやして言った。  ユキはこの家の全てを取り仕切っているから、ユキの機嫌を損ねると、夕食のおかずが一品足りなかったり、頼んでいた用事を後回しにされる。 「わかったよ。わかりましたよ。例の件、やってやるよ!」 「マジ?!和希ありがとう」  ユキは俺にぴょんと飛びついた。小さくて軽い、我が家の高性能アンドロイド。  俺とユキの思惑を何も知らない母さんは、「あらあら仲良し」と言って目を細める。
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