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 二人きりになると、ユキは上機嫌で、するすると服を脱いだ。インストール時に服を脱ぐのは、熱がこもらないようにするためだが、思わずガン見してしまう。  成熟していない少年の体躯。細い手足に無毛の身体。人と少し比率の異なる小造りな顔。家事ロボがそんな耽美な容姿でどうする、といいたい。そして嫌がおうでも股間に目がいく。ユキにちんこが……。こんにちは。 「さ、やろう」  全裸のユキは自らあーんと口を開けた。奥歯のさらに奥、俺は指をつっこんで、いろんなアプリを終了させる。これができるのは、管理者権限のある両親と俺だけ。とたんにユキはとろんと瞼が落ちて半眼になり、俺の腕の中で静かになる。   それを見届け、思い切って顎をはずす。ちょっとひくくらい、ぱこっと開く。耳の下あたりの皮膚がにーっとのびるのだが、いつも破れてしまわないか心配になる。  姿を現した喉の中の接続部に小指の先ほどのディスクをぶっさすと、今度は眼球の下に指をつっこんだ。スタートボタンがそこにある。ぐっと差し込み、ずるんと抜く。ユキのブルーアイズが緑になった。インストール中。  10分ほどでまた青に戻る。確認して再起動すれば問題ない。ユキは欲望を持ち、ちゃんとエレクトするようになる。  だが、結論から言うと、俺はユキをちゃんと再起動してやらなかった。起動してすぐスリープさせた。そうすれば、CPUは動くけれど、ユキの中に記録は一切残らない。  俺はその夜、意識のないユキを抱いた。ハルに先んじたのはただの一度、後にも先にもこの時だけだ。  最初ユキと見つめ合ったのも、好きだって言ったのも、唇を奪ったのも、ユキに「恋」を教えたのも全部ハル。俺はあの時、行儀よくユキの起動を待たず、ハルより先に強引にユキの視界に入れば良かった。好きだって言えば良かった。キスすれば良かった。なりふり構わず、欲しいって言えば良かった……家族だからできなかった、って言うのは言い訳で、人工知能に恋してるなんて、俺は認めたくなかった。ハルのように真正面からユキに向きあわなかった結果がこれだ。
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