第三話 それぞれの思惑

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 まるで鈴を鳴らしたかのような美しい声が響く。 「盗み聞きとは人聞きが悪いですねぇ。私はただ、お二人が何やらお取り込み中の様子でしたので、出るタイミングを窺っていただけですよ」  とガブリエルは答えながら、その姿を現した。 真珠のように柔らかく輝く肌。オレンジ色がかった金色の髪は玉虫色に光を反射し、小柄で華奢な体に沿って腰のあたり迄緩やかなウェーブを描いている。黄金色に輝く長く繊細な睫毛に縁どられた瞳は、南国の海を思わせるような透き通ったパステルブルーに煌めく。それはまるで「パライバトルマリン」の宝石を思わせた。  桜色の甲冑とローブに身を包み、腰には細身だがやや長めの桜色の剣を差している。その背には、ローズクォーツのように優しいピンク色に輝く翼を持っていた。薔薇の蕾のような唇。  ミカエルやルシフェルの美貌とは明らかに異なり、女性的な柔らかな美貌の持ち主である。 「それで、そなたはどう考える?」  唐突にルシフェルはガブリエルに問いかけた。 「何の事でしょう?」  ガブリエルは何の事かさっぱり訳が分からない、という様子でルシフェルを見つめた。
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