第三話 それぞれの思惑

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 その場所は、ゼウスが訪れる所とは異なるが、地球全体を眺められる場所の一つであった。断崖絶壁の岩には色とりどりの花が咲き乱れ、どこからともなく小川のせせらぎが聞こえてくる。  その場所に立ち、地球に向かって両手の平を翳 かざ し、黄金の光を放つ長身の青年がいた。細身ではあるが鍛え上げられた小麦色に艶めく肉体を持ち、鋼色に鈍い輝きを放つ甲冑とローブにその身を包んでいる。腰も鋼色の太く長い剣を差し、いぶし銀を思わせる重厚な輝きを放つダークグレーの翼を持つ。そしてプラチナブロンドに光り輝く巻き毛は 腰まで伸ばされていた。 「ウリエル(神の光・神の炎)」  その青年は名を呼ばれ、髪色と同じプラチナブロンドの長い睫毛に縁どられたその瞳を、声の主に向けた。  その瞳は得も言われぬ神秘的なグレーで、光が反射する角度によって淡いグレーにも深いグレーにも見える。それは夜の闇に輝く月の光を思わせた。その瞳は声の主を確認した途端、更にミステリアスな輝きを放ち、歓迎している事が見て取れる。 「ルシフェル様!」  その声色(こわいろ)はチェロを思わせる。落ち着いてよく通る声だ。そしてウリエルは地球に向かって放っていた黄金の光を止め、ルシフェルに向き合った。 「仕事中にすまぬな」   ルシフェルは穏やかにウリエルを見つめた。タンザナイトの瞳が柔らかく輝く。
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