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「私は、本当に感じた事を……」
と慌てて言いかけるウリエルを遮り、
「私が何を言っているのか解らぬか? では教えてやろう! そなたのこたえは、自らが感じているこたえではない。私が望むであろうこたえを言っただけであろう!」
と激しい口調で言い切った。絶句するウリエル……。それを見てやや表情を和らげたルシフェルは、
「私は、そなた自身が感じている事を聞きたかったのだ。私が満足するこたえなどいらぬ! そなたのそれは、自身が私の望むこたえを言う事で、私自身をそなたが望むような反応をさせたい、という操作・支配・コントロール欲求であろう?」
と、諭すように問いかける。ショックを隠せないウリエルは、必死で
「私は、ルシフェル様を操ろうなどという大それたことは……」
と訴えかけた。だがそれを冷たく遮り、
「本人が無自覚だから厄介なのだ。相手に気に入られようと、つまり自分が耐える事で相手を自分の思うように支配しようとしているのだ。人間どもが、相手の気持ちを知ろうと占いを利用する事にも同じ事が言える。相手を操作支配しようとしている事に気付かず、悲劇のヒロインに酔っているのだ。人間界の争い事の多くはこれを占めている」
と言うと踵を返し、その場を去ろうとする。更に慌てふためくウリエルは
「ルシフェル様、どうかお許しを……」
と必死で声をかけ、追いすがる。そんなウリエルを振り返り、ふっと優しい表情を浮かべた。
「私を喜ばせようとする必要はない。次こそそなた自身の言葉を聞かせてもらうぞ」
と声をかけ、その場を後にした。
「ルシフェル様……」
その場にひざまずき、そう呟きながらルシフェルを見送るウリエルであった。
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