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ルシフェルはそのまま歩みを続ける。ハーブや薬草が生い茂る小道を行くとほどなくして、トネリコと白樺の木で出来た家がある。シンプルだがとても温かみのある雰囲気だ。彼は白樺で出来た扉を軽くノックした。声はしない。ドアは開いているのでそのまま入って行く。窓辺には柔らかな光が差し、木製のテーブルには色とりどりの花が飾られていた。とても居心地の良い空間だ。
そのまま部屋の奥へと向かう。薬草の香りが漂ってくる。進むごとに色濃く。しばらくすると、顕微鏡を傍らに、大釜の中にハーブや薬草を入れ煮込んでいる者がある。試験管とスポイトを手にしている事から、無心に研究らしきものをしている、と推測される。
その姿は、艶やかな亜麻色の髪は波打ち。肩ぐらいの長さまで伸ばされている。それはまるで柔らかな光沢を放つビロードのようだ。その肌は雪のように白く、パステルグリーンの甲冑とローブを身に纏い、腰には深緑色に艶めく剣を差していた。その背には、翡翠を思わせるような優しいグリーンの翼を持つ。
その者はふと気配を感じ振り返ると、思わぬ人物に驚いた。
「ルシフェル様! これは大変失礼致しました」
と亜麻色の豊かな睫毛を伏せ、深々と頭を下げた。まるでバイオリンのような、不思議な癒やしの力を秘めた声である。
「ラファエル(神は癒やされる)、謝る必要はない。むしろ、私の方が知らせもなく訪れたのだ」
とルシフェルは応じた。ラファエルと呼ばれた青年は真っ直ぐに見つめた。その瞳は優しく輝くエメラルドを思わせる。
「研究か? いつも熱心だな」
ルシフェルは微笑みながらそう続けた。
「私はどちらかというと外を飛び回るよりは、こういった実験や研究の方が性にあっているようです」
ラファエルは微笑み返しながら応じた。そしてさり気無くルシフェルを更に奥の部屋に誘導する。
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