第三話 それぞれの思惑

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 ラファエルはゆっくりと話しを続ける。 「ですが、その迷う過程も彼らの大切な学びです。そうやって、自分自身を知っていくのです。人間は、確かに過ちも沢山犯しますが、気付いたらそこで取り返していけば良い。現に、そこに気付いている人間も出て来てはいますから。 物事は、両極があって初めて知るもの。争いがあるから、平和を知り、悲しみがあるから、喜び・楽しみの感覚を知るのです。人生には想定外の事はつきもの。たとえどんな素晴らしいマジックがあったとしても、自分に都合の良い事だけを引き寄せる事など不可能……という事に早く気付いて、」人生を自分で切り開き、自分だけの人生を味わってほしいですねぇ」  その言葉に耳を傾けているうちに、ルシフェルは苛立っていた心が少しずつ落ち着いていくのを感じた。そしてフッと笑顔を浮かべる。 「もし人生が自分の思い描いた通りにしか進まなかったら、何が平和なのか基準が解らなくなる。退屈で退屈で仕方なくて、刺激が欲しくなるものだしな」  と答えた。 「……この天界のように、ですか?」  とニッコリ笑いながら、ラファエルは問いかけた。二人は同時に噴き出した。 ……優しい空間が二人の間に流れていく。ルシフェルはゆっくりとハーブティーを味わった。
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