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「そうだな、天界のように……だな」
ぽつり、とルシフェルは噛みしめるように言った。二人は同時に噴き出した。優しい空間が流れる。
「さすがだな、ラファエル。『許し』は究極の癒やしと愛の光、というが、そなたを見ていると成る程な、と思うぞ」
としみじみと感じ入ったように言った。ラファエルは、おどけたように肩をすくめ、
「怒りや恨み等の激しすぎる感情は、無駄にエネルギーを消費します。そうすると、私の好きな実験・研究に費やせるエネルギーがなくなりますし、常にイライラしますから、それでは私が楽しくありません。
それにね、不可侵条約により、そもそもが人間達を操作・支配・コントロールは出来ないので。どうしようもないものを何とか操作しようともがくより、許してしまった方が私自身が楽だからなのですよ」
と答えた。そして不意に真顔になる。
「ルシフェル様、どうか一人で抱え込まないでください。私達は、そんなに頼りになりませんか?」
と問いかけた。ルシフェルは一瞬ビックリしたように目を見開いた。しかし、すぐに観念したように
「やはり、そなたには敵わないな。どうやら私は、熱くなり過ぎて周りが見えなくなっていたようだ」
と微笑んだ。
それからしばらくゆっくりとした後、ラファエルの元を後にした。気遣わし気に見送るラファエルの優しさをその背に感じながら……。
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