第四話 天界の神々

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「人間なんか滅ぼしてしまえよ。議論する余地など無いだろう!」  いかにも面倒くさそうに言う男は、鍛え上げられた肉体美、長身を誇る。艶やかな褐色の肌に、彫の深い顔、燃えるような赤い短髪がよく似合っている。そ鋭い光を宿し、燃え盛る紅い瞳も印象的である。炎の甲冑を身に着けている様は、猛る軍神と評するに相応しい。 「兄さん、お待ち下さい。人間が改心する可能性も捨てきれません。いきなり消滅は酷ですわ」  短気な兄、軍神アレースを窘める涼やかな声の持ち主は、妹である知恵と戦いの女神アテナである。腰のあたりまで伸ばされたサラサラの髪は藤色で、クリーム色の肌によく映える。端正な顔立ちに涼やかな藍色の瞳が美しい。知性と思慮深さを湛えて穏やかに煌めく。銀色のイオニア風ドレスが高貴さを際立たせる。 「私も、人間には嫌悪感しか湧かないが、いきなり滅するのは感心せんな」  重々しくそう口を開いた男は、腰から下だけを深緑色のローブで多い、上半身を晒け出す事で、褐色の肌に鋼の肉体を持つ事を誇示していた。漆黒の髪は首のあたりまで波打ち、ハシバミ色の瞳はこの男が只者ではない器を示すように印象深い。彼は海の神。ポセイドンであった。  オリンポスに神々が集い、人間について話し合いがなされていたのである。
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