第四話 天界の神々

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「……人間に対して好意的に見ている者の方が少ないようじゃな」  ゼウスは重々しく口を開いた。 「むしろ何故そこまで、人間に思い入れがあるのかに大いに興味が湧きますね」  凛と冷たく澄んだ声が響く。高く結い上げた藍色の髪は、艶やかに腰のあたりまで流れている。まるで滝のようだ。スレンダーな体はパール色のドレスで包み込み、それは右太ももからスリットが入っていて動き易そうな半面、美しい大理石のような脚が剥き出しとなっている。 「アルテミス、そういうお前はやはり人間を滅ぼす方に票を入れるという事か?」  ゼウスは問いかけた。彼女は月と狩猟の女神である。漆黒の瞳は夜空を思わせ、星を称えたようにキラキラと輝いていた。 「私自身は人間次第、という感じですわ。警告を与え、しばらく様子を見て決めとうございます。ただ、ゼウス様が何故に人間を庇うのか? その理由が知りたい。そう思っただけですわ。そう思っているのは、私だけではないと思いますけど」 「その辺で辞めておきなよ。ゼウス様にはゼウス様のお考えがあるのだろう。全てを私たちに言えないことだってあるさ」  甘くソフトな声。陽光を思わせる見事なプラチナブロンドの髪は肩のあたりまで巻き毛を作り、この上なく甘く端麗な顔の周りを覆う。宝石のペリドットを思わせる美しい黄緑色の瞳は、見るものを虜にさせずにはおかない魅力に輝く。 「アポロ兄様……」  アルテミスはおとなしく引き下がった。乳白色のローブで身を包んだこの男は太陽と芸術の神アポロ。アルテミスの兄でもある。 「ゼウス様、私はゼウス様に従います。人間にはさほど思い入れはありませんし」  アポロは穏やかな笑みを浮かべた。
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