第六話 Light and darkness ~光と闇を見つめて~ 

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「人間は、たとえ 10 のうち9恵まれたものがあったとしても、残りの1つを欲しがり、無い、無い、不公平だと悲観する習性があるようです。そしてその足りない部分を求めて必死に努力する者、あるいは他の者を羨み自暴自棄になる者、または自分だけ良い思いをしようと他人を蹴落とす事に執着したりする者も出ている様子です。幸せは誰かが、或いは私達が運んでくれるものである、と思い込んでいる為、なかなか自分自身の中に元々ある幸せを感じる力に気付きにくいのです。 更に厄介な事に、幸せ・成功の形というモデルケースを一部の権威ある者達が創り出してしまった為、各自その幸せの形に自分を当てはめ更に、自分には無い、と嘆く者、或いはその反対に優越感に浸る者も出てきて尚更彷徨う者が多く見られます。その為簡単に我々の名を語るものを盲信してしまう者も少なくありません。本来は、ゼウス様は皆それぞれに個性というギフトを与え、幸せや成功の形は人それぞれ異なるように、争わないようにお創りになられたのですが……。 どうやら、人間はせっかく与えられた唯一無二の個性を活かすより、自分以外の誰かになろうともがく者が非常に多いようです」  ゼウスは悲しげに 「生まれる前に設定してきた課題や使命を敢えて忘れるように設定し、選択の自由を人間に与えてしまったのは、やはりワシの間違いだったのだろうか?」  と問いかけた。
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