第六話 Light and darkness ~光と闇を見つめて~ 

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ルシフェルの深いアメジスト色の瞳が一際鋭く光る。 「いいえ! それは違います! ゼウス様は、敢えて自分が設定した課題や使命、役割を忘れさせる事で、その者が自由に生きる事が可能なようになさったのです!   しかも占いという自分の個性や使命を活かすものまで与えられ、彼らの選択の自由を広めました。それは、人生が予め決められてないからこそ、自分の人生を自分で決め、クリエイトしていける醍醐味を味わえるように、というゼウス様の最高にして最大の愛情だと思います!」  と強く言い切った。それを受けてゼウスは、やや自嘲気味に 「ワシは、決められた役割・決められた使命・決められた出来事を機械的にこなすだけの日々に飽き飽きしてしまったのだ。自らが望んだら全て叶う人生など味気なく非常につまらないものだからのぅ。人生は何が起こるか解らないから楽しいのだ!   というワクワク感を味わってほしくて人間を創ったのだが……。占いを、人の気持ちを知って自分に都合の良いように他人を操ろうとしたり、自分にとって都合の良い事だけを引き寄せよる為に利用しようと画策する者が多いとは……残念ながら占いはそのような事には使えないのじゃがのぅ。皮肉なものよのぅ」  と答えた。 「人間は自由とは言っても、自己責任がセットで付きまといます。自分一人で生きている訳ではなく、様々な人との関わりの中で生きる為には、暗黙のモラルのルールはどうしても存在しますから。ですから、元々人間は迷い易い生き物なのかもしれません。迷いながら様々な過程を得て、色々気付いていく者もいるようですしね。 ですが私は、人間達が羨ましいです。選択の自由。自分の自由に人生を生きられる事、何が起こるか解らない日々が……。ですが、それも結局は私自身も無い物ねだりをしているだけなのかもしれませんね」  ルシフェルは遠くを見つめながら呟いた。ゼウスは哀しげに 「すまぬの、ルシフェル。結局お前一人に押し付ける形に……」 そう言いかけたゼウスを遮る。 「何をおっしゃるのです! 私が進んで望んだ事なのですから」  とルシフェルは微笑んだ。全てを悟り、覚悟を決めたようにその瞳は静かなる光を湛え、澄み切っていた。
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