第六話 Light and darkness ~光と闇を見つめて~ 

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ルシフェルとミカエルの戦いは激しさを増したが、その結界はビクともしない。それどころか、こちらから外側を見る事は出来ても、外側からは中を見られないようになっているようだ。  ウリエルは、ゼウスのガードが安定したのを見て更に両手で先ほどより複雑な印を結ぶ。そして左手は印を結んだまま、右手の人差し指を頭上に掲げこう唱えた。 「更なる汝の力を我らに! 内側より外側を、外側より内側の守護を!」  すると、ウリエルの右人差し指から一瞬白く眩い光が溢れ、既に張られているゴールドの正十二面体のゴールドの結界の外側に、白く輝く正二十面体の結界が張られた。  ルシフェルとミカエルの戦いは熾烈を極めていた。 ミカエルは、最初はルシフェルに対する怒りから戦っていたが、途中から無意識に戦いそのものに無心になっていた。それは、己の正義を貫く戦いというよりは、幼い頃、ルシフェルと剣の稽古をしていた時のような無心・夢中になる感覚だ。  そしてまたルシフェルも、腕を上げたミカエルを頼もしく感じ、彼自身も少しの間無心になっていた。  だが、ウリエルの白く眩い光が目に入った瞬間、そろそろ潮時だな、と自嘲気味に微笑む。 「ミカエル!」  と叫ぶと、渾身の一撃をミカエルに向けた。一瞬ひるむもすぐに立て直し、ミカエルも渾身の一撃をルシフェルに向ける。そう、彼は刺し違える覚悟で、ありったけの力でルシフェルに剣を振り上げたのだ。ミカエルが相打ちだな、と感じた瞬間、ルシフェルは慈愛に満ちた瞳でミカエルを見つめる。そして不意に体の力を抜いた。更に自ら斜め横を向き、その銀色に輝く美しい翼を彼に差し出した。  ハッと気付くも勢いがつきすぎ、そのまま剣を振り下ろすしか出来ないミカエル。 「ルシフェーーーーーーーーーーーール!!」  と悲痛な叫びを上げながらルシフェルの翼に剣を当てた……。
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