第六話 Light and darkness ~光と闇を見つめて~ 

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「冥界の番人、ハデスと申します。鎧を身に着けたままのご無礼をお許し下さい。ルシフェル様をお迎えにあがりました」  まるでコントラバスのように地に這うような声音で言った。 「構わぬ。冥界には冥界のしきたりがあるのだろう。ご苦労だった」  迷わずに冥界の扉に向かっていこうとするルシフェル。 「ルシフェル様! どうか……どうか私も御一緒に!」  と跪きながら叫ぶウリエルに、ルシフェルは振り返る。 「気持ちは嬉しい。私もそなたを連れて行けたら、と正直思う。だが、そなたは天界に残れ。天界にも闇は必要なのだ。光が強ければ強い程、影は濃く深くなるもの。天界を頼んだぞ!」  と優しく微笑み、ウリエルを見つめた。 「……はい!」  ウリエルは悲しみをこらえながら、しっかりと返事をした。ルシフェルは潔く漆黒の扉に向かう。冥界の扉に近づくと、ハデスは 「失礼致します!」  と声をかけてルシフェルの背中に両手を翳す。するとルシフェルの背中は一気に闇のオーラに包まれ、ほどなくしてその背に黒水晶(モリオン)を思わせる、左右合わせて6枚の翼が誕生した。その瞬間、ルシフェルは 「以下、憎しみ、怒り、嫉妬、妬み、恨み、殺意等ありとあらゆる闇・悪と呼ばれる事は、この冥界の王ルシフェル改めルシファーが全て引き受ける!」  と声高らかに宣言し、ハデスを伴い冥界の扉に消えて行った……。
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