終章

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 ゼウスは玉座に座り、ガブリエルはその左に控えている。 「ガブリエルよ、すまんの。この右側はルシフェル以外に考えられぬのじゃ。そなた一人でやってはくれぬか?」  とゼウスは問う。その右手にはめられた、アメジストの銀細工のブレスレットを愛おしそうにみつめながら。 「奇遇ですね。私も、右側はルシフェル様以外は認めるつもりはございません、と申し出ようと思っておりました。仕事の事でしたら、今までとほとんど変わりませんからご心配なく。だってルシフェル様はよくサボってましたから」  と答えるガブリエルに、ゼウスは久々に笑顔を見せた。  ウリエルは天使軍団が待機している「セフィロトの樹の丘」へと向かっていた。その足取りは自信に満ち、力強さを増していた。  ミカエルはハッと目を覚まし飛び起きる。隣にはラファエルが控えており、 「気が付かれましたか?」  と優しく微笑んだ。どうやらここはラファエルの家のようだ。ミカエルは一瞬にして何が起こったのか思い出す。 「ルシフェルは?」  と急き込んで問いかけた。 「ルシフェル様は、お一人で冥界の王になられ、ルシファー様と名乗られました」  と答える。ミカエルは困惑気味に 「そんな、何故……」  と呟く。そんな彼にラファエルは 「ルシファー様は、今後はありとあらゆる闇と悪の事は全てご自身が引き受ける、との事でした。そしてミカエル様にこれを、と」  と穏やかに諭すように話し、持ち手に銀細工のアメジストが埋め込まれたミカエルの剣を差しだした。  震える手でそれを受け取る。サファイアブルーの瞳に涙が光る。 「そ、そんな……あ、兄上!!」  と絞り出すような声を上げ、その剣を胸に抱きしめた。
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