終章

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 冥界の玉座に座るのは、漆黒の6枚の翼を背に、闇の色の甲冑とローブを纏い、プラチナ色に艶めくロングストレートの髪、アメジストに艶めく瞳を持つルシファーである。彼は 「ヘルメス! 我が元へ!」 と言葉を紡いだ。すると瞬時に、彼の目前に跪く青年が現れた。 スカイブルーの甲冑とローブを纏い、銀のヘルメットにパール色の翼が両耳に施されている。銀色の靴の両脇にもパール色の翼が。銀色の大きな目に、銀色がかったスカイブルーの柔らかな巻き毛が、肩に波打つ。 「お呼びですか? ルシファー様」  と答えた声はフルートのようによく通る。 「そなたに広めてほしい話がある。……天界で神々の寵愛を一心に受けたルシフェルは、自分こそ神と思い上がり、または人間を愛し慈しむゼウス様に嫉妬し、謀反を起こしてミカエルに負け、冥界に落とされた、と」  冷静に淡々と告げる。 「そんな! それではルシファー様一人が悪者に……」 と言いかけたヘルメスを遮り、 「構わん! むしろ徹底的に闇・悪を引き受ける役は人間界にも天界にも必要不可欠! 陰陽のバランスを取る為にはな」  と言い放った。 「御意」  ヘルメスは風のように去った。 ルシファーは天界のミカエルに想いを馳せる。 「我が弟よ……」  と、この上なく優しく呟いた。 ~完~
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