第二章 淡黄の蕾

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 電波を通して尚、彼女の世界は強烈だった。出てはくれるが、基本的には無言。質問も会話もこちらからで、僕の言葉の意図が読めない時だけ質問が返ってくる。その他は、短い文。もはや単語。  そして落ち着きはらった、透き通るような声。耳からびりびりと入り込んでくる白黒に、僕は恍惚とした。 「名字、はじめて聞いたけど凄く似合ってるね」 「そう」 「携帯、壊れたの?」 「違う」 「……教えたくなかったの?」 「どうして?」 「もしかして、携帯持ってない?」 「うん」  彼女の返事はどれも素っ気なかったが、拒否されているのではなかったという事実に胸が弾む。ほぼ相槌ではあるが、会話を続けてくれるのが嬉しい。  思えばこの時。僕は既に逃げられないまでに、彼女の世界に取り込まれてしまっていたんだ。切り離そうとすれば、自らを傷付けなければならないほどに。僕は確実に、彼女の中へと踏み込んでいった。
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