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「最近お前、ほんと調子いいよな」
描くもの描くもの誉めちぎられ、描くペースは増すばかり。学校のWebサイトにのっている僕の作品を見て、買い取りたい、なんて申し出も来ているらしい。
「そんなことない、なんて言ったら嘘になるね」
「そりゃあそうだろう。やっぱり秘訣は彼女?」
「まあね」
僕の作品は、どれも彼女がテーマのものばかりだ。彼女の世界を描いたもの、彼女自身を描いたもの、彼女といるときの僕を描いたもの。尽きるようで、永遠と湧き出てくるアイデアに、自分でも驚きが隠せない。
「いいよなぁ。俺も彼女作ったらもっといい作品描けるかね」
少しおちゃらけて言う友人は、中々に整った顔をしている。
「彼女作ろうと思えば作れるだろ」
「でもなぁ、そういう問題じゃないんだろうなぁ」
そう呟いて僕の最新作を見やった。端正な顔立ちが、嬉しそうに、それでいてどこか物憂げに歪む。
「こういうのを描くには……きっと何か、大きな転機が必要なんだろうな」
僕にその転機が訪れたことは、幸運だったのか。それとも不運だったのか。回り始めた歯車は、止まることなく、その勢いを増すようにして動き続ける。
このまま動き続ければ、いつか壊れてしまうことには、決して気が付かずに。
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