第三章 山吹の花

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「そろそろ、帰ろうか」 「うん」  会計を済ませ、席を立つ。帰宅の提案に彼女は顔色一つ変えず、即頷いた。対して僕はかなり後ろ髪を引かれるが、即答されては引き留める言葉も出ない。 「美味しかったね」 「まあ」  駅へ向かいながらの、いつも通りの味気ない会話。気温はますます下がってきているようで、口元に白い呼気が浮かぶ。 「次はどこへ行こうか」 「どこでも」  別れの寂しさと、次へのわくわくと。様々な色が、混じり合う。 「行きたい場所とか、ない?」 「うん」 「逆にここは嫌だなー、とかは?」 「特に」 「そっか」
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