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描きたい。
こんなにも逸る気持ちは、いつぶりだろうか。初めは好きで、やりたくてやりたくて仕方なかったはずのものが、いつしかやらなきゃいけないものに変わっていた。沸き上がった懐かしい感情に胸が熱くなる。
僕の作業場は気が付けば、学校のデッサン室からモノクロの駅へと移っていた。暖房どころか壁すら付いてないそのアトリエは、むしろ僕の頬を上気させる。聞こえてくるのは、時たま通る電車の轟音と木々の乾いた声、小鳥の歌声。ここに来る人間はいつも僕しかいない。
僕だけのアトリエ。
その場所に、僕は彼女を見ていた。一日と欠かすことなく、僕は彼女に会いに行く。彼女はあの日と寸分違わぬ姿で僕の瞳に映っていた。来る日も来る日も。
外には、乾いた空が広がっていた。
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