ギネの暴君 その3 巌流島の決闘

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ギネの暴君 その3 巌流島の決闘

手術室を出る直前、宮本准教授は私をにらんでこう言った。 「佐々木? ……使えねぇヤツ」 怖ぇ~、チビッたかも。 その後、流した涙は川となり大河となり海となった。そして再び暴君と対峙(たいじ)する日がやってきた。 その日は子宮がんの手術だったが、手術中、多量の出血が予想された。こういうときは産婦人科の担当医が事前に輸血を準備しておくのが常識だ。だが準備されていなかった。 手術開始。手術はまず子宮の摘出、次に卵巣の摘出、最後にリンパ節郭清の順に行われる。がんの周囲には癒着(ゆちゃく)があったり、血管が脆(もろ)くなっていたりして、出血しやすい。じわじわと出血して、出血部位がわからないこともある。 「助手の鉤(かぎ)引きが悪い!」 宮本准教授が早くもエキサイトしている。外回りの看護師が出血量を測定する。
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