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最終列車
残業で終電ギリギリに駅へ飛び込んだ。
もう急行列車はなく、あるのは最終便の各駅停車だけだ。
終点までかなり時間がかかるが、これしかないのでは仕方がない。途中下車をする訳じゃないから、いっそ電車の中で寝ておくか。
そう考え、一応到着時刻にアラームをセットして眠る体勢になったのだが、周りの様子のせいでどうにも寝つけない。
田舎の最終列車だというのに、やけに乗り込む人が多い。それだけならまだしも、停車する駅の数が多過ぎる気がする。
気になってアナウンスを聞いていたら、普段は利用しなくても一応知っている以外の駅名がたくさん出てくる。そこに当然のように列車が停まる。そして乗り降りする沢山の人達。
俺の使用している路線にこんなに駅はない。多分こんなに利用者もいない。
しっかりと目を開けて確認すれば抱えた疑問は明らかになるだろう。でも俺の本能が、決して目を開けるなと告げている。何かを確かめたりはせず、このまま終点まで寝たふりをし続けろと警鐘を鳴らす。
多分、いや間違いなく、この警告に従うべきだろう。
終着駅到着まであと二十分弱。その間俺は、仕事疲れで寝入ってしまった人を演じ続けるのだ。
最終列車…完
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