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「ほ…………ほんと……?」
「うん。ほんと」
白い手が、優しく理沙の手を取って、そのまま小指と小指を絡めた。
「約束。ね?」
「う、うん……」
自分より大きい瞳で見上げられて、笑いかけられて、理沙はおずおずと頷く。目を泳がせてはいても、涙を流すような予感はもうない。
「あ、あの……傘……自分で持つからっ……」
「僕、傘ないんだよね。一緒に入っていい?」
「あ……うん……いいよ……」
小指を離した二人は、一つの傘の下に並ぶ。
ふと、迫力のある音が落ちてきた。
「あっ。ねぇ、見てっ。雷」
無邪気に立ったカエル君の人差し指が、雨を通す天井を指す。俺も、理沙も、それを目で追いかけた。
雲が何重もさまよう雨空の真ん中。細長い紫色の光の筋が、ランダムに、でもたった一瞬で、鮮やかにでしゃばる。
「綺麗だねっ」
「うん……綺麗……」
カエル君も、理沙も、凶暴な光に見とれてるようだ。雨と雷がケンカを繰り返す、平和とは言えないこの光景が、二人は気に入ったらしい。
怒ったような鳴き声と一緒に、何度も目立ちたがる光。
「綺麗……か?」
俺にはそんないいものには見えない。こんなぐずぐすした暗い空より、スッキリ明るい青空が見たい。
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