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【R18】ハドナの闇
やがて、自警団詰め所が見えてくる。
ここハドナは軍事的重要拠点ではないので、騎士団の人間はいない。その分町の勇士が自警団を作り、町の治安を守っている。
だが、犯罪が起こった時には騎士団とも連携するらしく、そのツテでファウストは顔見知りだった。
通された一室に、程なくして一人の男が入ってきた。年齢は三十後半から、四十代だろうか。白に青ラインの上着を着た、少し気の抜けた男だった。
「ファウスト様、お久しぶりですな」
「ウォルシュ、久しぶりだ」
立ち上がったファウストに、この自警団の責任者だというウォルシュは挨拶をしているが、やはり言葉よりも怠惰に聞こえる声音だ。声音だけだろうが。
その視線が、ランバートと少年に注がれる。特に少年を見て、気怠げな青い瞳が一瞬鋭くなった。
「ミック、どうした?」
「あの……」
少年は俯いて口をつぐむ。言えない事を悔しく思っているのか、プルプル震えている。その様子に、ウォルシュは溜息をつき、きつくウェーブのかかった焦げ茶の髪をクシャリとした。
「あのなぁ…」
「彼の持っていた絵を、何者かが強引に奪い取って逃げました。馬車の番号はH841です」
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