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言えなくなっている少年に代わって、ランバートが伝える。それに、ウォルシュは僅かに眉を上げ、少年に近づいてアイスブロンドの前髪をクシャリと撫で上げた。
「あのなぁ、そういう事は言えっていってるだろ」
「ご…めんなざぃ」
「責めちゃいなが、お前の為にもならないだろ」
呆れたような、だが見守る穏やかなウォルシュの視線に、少年は声を震わせて泣いてしまう。悔しさや悲しさが溢れるようなその姿に、何か見過ごせない事が起こっているのを感じた。
「悪いなぁ、兄ちゃん。こいつは内にため込む癖があって話したがらなかったろ。それでも気にかけて連れてきてくれて、助かったわ」
「あぁ、いいえ」
何が起こっているのだろう。それに、奪われた絵は。第一この子の絵をどうして奪う必要があったのか。コンクールの品を狙うなら、もっと有名どころを狙うだろうし。
「犯人はなぁ、分かっちゃいるんだが手がだせねぇ。手の悪いこった」
「分かってるなら何故手が出せない」
「犯人がこいつの工房の師匠。つまり、責任者のロナードだからだ」
その言葉に、ランバートの中で静かな炎が起こった。
この子が必死に守ろうとしたなら、あの絵はこの子が描いたものだろう。それをどうして、師匠が潰しにかかるのか。
卑怯だ。そして、理不尽だ。こんな事を許していいはずがない。どうしていつも傷つくのは力のない人達ばかりなんだ。
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