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下町でも感じた。エルの一族の時にも感じた。ラン・カレイユの盗賊少年達にも感じた。この国は、いつからこんなに腐っていたのか。
ポンと、肩に手が置かれる。見上げた先の黒い瞳は、同じく怒っているのが分かった。けれど、冷静だ。
冷静に、一呼吸置く。一度目を閉じ、深く息をする。そうすると、胸の中の熱も少し下がった気がした。
「詳しく話を聞こう」
「騎士団が手を貸してくれるので?」
「必要ならそうする。だが、この少年の事はそれでは間に合わないんじゃないのか?」
ミックと呼ばれた少年は肩を震わせる。それだけで、余裕の無さが感じられた。
ウォルシュは少し考えて頷いた。
「こいつはロナード工房の見習いなんだが、才能があってな。それを見抜いたロナードがこいつに絵を描かせて、それを自分の名前で画廊に卸してる」
「な!」
ゴーストライター。しかも、この様子ではミックの了承を得ていないし、この痩せようはまっとうな扱いも受けていない。売ったお金も払っていないのだろう。
胸くそが悪い。思わず拳を握ってしまい、それをウォルシュが見て苦笑された。
「こいつがそれに気づいたのが、半年前。偶然画廊の前を通って、自分の描いた絵が師匠の名前で出されているのを見つけたんだ」
「それで、どうした?」
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