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それに、もしかしたら彼の思いは甘かったのかもしれない。例えあの絵をコンクールに出展したとしても、後でロナードが「これは私の絵だ。ミックが勝手に持ち出したんだ」と言えば覆りかねない。彼の画風はこれまでロナードの名で出回ってしまったのだから。
言いようのない悔しさがこみ上げてくる。どうにかしてやりたい気持ちになる。この誤解を解かなければ、この子はずっと日陰だ。
「盗まれた絵に関しては、馬車を辿れば行き着くでしょう。人の多い場所で起こった窃盗事件ですし、目撃者もいますからね」
「分かった。必要があれば騎士団を派遣する。要請してくれ」
「助かります、ファウスト様。こちらはなんせ自警団で、捕まえても罪を償わせる事はできませんからね」
そう言ったウォルシュもまた、どこか悔しげだった。
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