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結局この日、ミックはウォルシュが預かると言う。ウォルシュが夜勤で、ミックをそのまま自警団詰め所に寝泊まりさせるそうだ。ある意味目が多いぶん、安心だろう。
それでも気持ちは晴れない。せっかくの旅行なのに、水を差されてしまった。
外で夕食を食べて、宿に戻ってきてもどこか憂いが残るままだ。
「ランバート」
不意に名を呼ばれ、ランバートは顔を上げる。困ったように苦笑したファウストが近づいてきて、そっと頬に触れた。
「随分と大人しかったな」
「え?」
「日中の」
「あぁ……」
言えば困らせるだろう。何より誓ったばかりだ。一人でカッカして飛び出してはいけない。この人の負担になりたくない。心配をさせたくない。
だが、温かな手が甘やかす様に動くのに気が緩む。せっかく硬くした心が蕩けていく。
「確かに俺は、単独で動くなとは言った。だが、必要な時に動けないようなら動いていい」
「え?」
「あの少年を助けたいんだろ?」
困ったような苦笑が見下ろしてくる。バレている。でも、躊躇ってしまう。
「旅行に来てるのに、仕事しちゃ何の為の休暇か分からないし。それに、騎士団の仕事じゃ……」
「ランバート」
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