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カウンターにいた愛想のいい女性が明るく言って鍵を渡してくる。二階の一室は何の変哲もないツインの部屋。ベッドがそれなりに大きいのが助かる。
「良い部屋だ。表通りが見える」
「人通りが多いな。何かやってるのかな?」
窓を開けて外を見れば、人の通りが心なしか多い。それに、どこか浮き足立っているような気がする。
「お祭りでもあるのか?」
「さぁ? 一階で食事するついでに聞いてみようか」
何にしてもせっかくの旅行だ、賑やかで楽しいのは大歓迎だった。
程なく一階で食事をした。キングスから近い事もあって、新鮮な海鮮がとても美味しい。
料理を運んできた先程の女性に声をかけると、女性はにこやかに教えてくれた。
「冬の絵画コンクールがあるんですよ。テーマに沿った絵画を各工房の画家が描いて、それを一般のお客さんも含めて点数を付けるんです」
「ほぉ、それは見応えがありそうだ」
ファウストの表情も明るくなり、ランバートもそれに頷く。ここには多くの工房がある。そこが手がけるイベント用の絵画だ、楽しみだ。
「コンクールの審査が三日後なんですよ。現在中央美術館で事前公開をしていますよ」
親切な女性が去った後で、ランバートはファウストに視線を向けた。
「行ってみたい」
「勿論だ」
「楽しみだな」
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