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画材店でスケッチブックを三冊と、鉛筆を買った。それをミック、俺、そしてファウストにも一セット押しつけた。
「…え?」
「ファウストも一緒に描こう」
「いや、俺は!」
「大丈夫、何でもやってみるのが大事」
単純に見てみたいというのがある。
そうして向かったのは一般開放されている美術館併設の庭園だった。
雪化粧された庭園には花はないが、アーチに積もる雪や樹木を覆う雪。それらが陽光を浴びてキラキラと輝く様は美しいものがある。
三人並んで座って、噴水のある小さな円形庭園をスケッチした。春から秋、ここはバラに囲まれた美しい場所となるそうだ。
その様子を想像しながら、ランバートは描き進めていく。バラの花が咲き誇る、冬の庭園。今ではない想像の世界を落とし込んでいく。
「ランバートさん、お上手ですね」
隣でミックがランバートのスケッチを見て目を輝かせている。
そういうミックの絵を見て、ランバートは言葉を飲んだ。
とても、美しく儚く幻想的だった。
確かに背景はこの庭園だ。だがそこに寄り添うのは美しい乙女と、一頭のユニコーン。周囲は澄み切った清廉さが伝わるようだった。
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