少年は夢を見る

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 写実ではない、虚構の世界。だが、間違いなく美しい透明感と神秘性に溢れた世界。この才能が、今まさに潰されようとしている。  何とかならないのか。何か方法はないのか。必死に考えて、ふととある可能性にいきついた。 「ミック、ロナードは毎年このコンクールに出品しているか?」 「え? あぁ、うん」  でも、昨日の段階ではその名を見てはいない。そして絵は処分されていない。ならば可能性は一つだ。 「ミック、素描コンクールに出よう!」 「え?」 「そこで、今回ミックが描いた絵を描くんだ! 寸分違わず描けるだろ?」 「うん…」 「ランバート?」  肩を落とすミックの腕を引き、戸惑うようなファウストにも視線を向ける。それだけでファウストは理解出来ないまでもついてきてくれる。  戸惑うミックを引っ張って美術館の中を巡り、まだロナードがここに絵を持ち込んでいない事を確かめてから、ランバートは素描コンクールへとミックを連れていって無理矢理に持たせた。  そして、ミックは唇を噛みながらも絵を仕上げていく。 「どうしたんだ、強引に」 「ロナードはここに、奪ったミックの絵を出展すると思う」 「え?」     
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