コンクールの行方

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コンクールの行方

 翌日、とうとう冬のコンクールの投票、表彰日となった。  だが、美術館関係者はそれどころではない緊迫した事態となっている。  朝から呼び出されたミックとロナードを前に、町の有力者や美術関係者、鑑定人が怖い顔で腕を組んでいた。 「これは一体、どういうことですかロナードさん」  示されたのはロナードが出展した絵と、ミックが出展した素描だ。あまりに酷似したそれを隣り合わせにした面々は、当然ゴーストライターを疑っていた。 「これは! この子はうちの弟子でして、それで私の絵を模写して…」 「この子が絵を描いたのは素描を受け付けていたまさにその目の前、しかも貴方が提出するよりも数時間も前の事。これは受付をしていた係の者がしっかりと覚えておりますぞ」  こうなると言い逃れはできないだろうが、それでもロナードは歯を食いしばり憎々しげにミックを睨み付け、冷や汗をかいて居並ぶ面々へと言い訳を続けている。 「ランバート、これは必要あるのか?」  ミックの保護者として、ランバートとファウストはついてきた。部屋の端っこで、事の成り行きを見守っている。     
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