コンクールの行方

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 実はここに来る少し前に、盗賊を使ってミックの絵を盗ませた画廊の主人がロナードの名を吐いた。しかも美術展にはミックの絵がロナードの名で出展されている。物証もある。捕らえようと思えば出来る段階にある。  だが、ランバートはそこに待ったをかけてもらった。自警団には美術館の各入り口にいてもらい、護送の準備をしてもらったが、美術館側がどういう判断を下すか答えが出るまで待ってもらうようお願いしている。 「ここでロナードを捕らえても、窃盗と監禁程度。ミックの名誉を回復できない。だから、今が大事なんだ」  これまでロナードの名で出されていた絵の全ては、ミックが描いた物だと証明しなければ。今回の絵も、ロナードでもロナード工房でもなく、ミック個人の名前でなければならない。画家としての彼をすくい上げなければ意味がない。 「さて、どうしたものか…」  美術館の者達もどう判断を下すべきか、腕を組んでしまった。ランバートはそこで、毅然と手を上げる。注目が集まる中、ランバートは一つの提案を投げた。 「衆人環視の元で、二人に素描を描かせてはどうでしょう?」 「素描?」 「同じ景色に同じモデルを置き、二人に描いてもらうのです。ロナード氏が主張するようにミックの絵がロナード氏の完全なまねであるなら、素描も必然的に似ているはずです」  会場からは「なるほど」「そうだな」という声が溢れる。その中でロナードだけが顔色を変えた。     
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