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程なく美術館のホール内にモデルの女性を座らせ、多くのギャラリーや美術館員が見守る中で素描大会が行われた。
作品への投票の来ていた人々もガヤガヤとその様子を見ている。
ランバートは離れた所でそれを見ている。隣にはファウストもいて、少し落ち着かなくしていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「だが…」
「もう、心配性。ミックは大丈夫」
絵を描くことが好き。お金じゃなくて、笑ってくれる人の笑顔が好き。
ミックが似顔絵を描いている時に言っていた言葉が全てだ。
似ていたんだ、ランバートと。だからこそ助けたい、救いたい。そのキラキラしたものを失わずにいられるように。
結論は簡単についた。ロナードの素描はミックの絵とは全く違う、古典的で面白みのないものだった。それでも、基礎をしっかりとやった人間の重みと重厚さはあったのだ。
どこで間違ったのか、どこで躓いたのか。この男も金や名声ではなく地道に歩いていければ、これほどの間違いは起こさなかっただろうに。
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