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なんて言ってページをめくって、ランバートは固まった。
そこに描かれていたのは、絵を描いているランバートの横顔だった。驚くのは、前の絵とのギャップだ。
ランバートを描いた素描は、とても良く出来ている。顔のラインの柔らかさ、唇の感じや、瞳、髪、表情。どれを取ってもよく見ている。
そう、よく見ているのだ。
「なん…で……」
それだけ良く見ていたから。答えは簡単だ。
ファウストはちゃんと見る目は持っている。それを写し取る努力をすれば、ちゃんと描けるのだろう。現に絵には何度か擦るかして線を消した跡がある。
頬が熱くなっていく。こんなに緻密に、楽しさまで伝わる程見られていたのに、気付かなかったんだ。
恥ずかしさと、嬉しさと、なんだか愛しい気持ちがこみ上げる。
ランバートはこの絵の隣に、自分のスケッチブックを持ってきて開いた。そこには同じように、穏やかな表情のファウストがいる。ランバートも彼と同じように、相手の事を描いていた。
「俺達、バカップルかも」
お互い好きすぎるでしょ。
笑って、でも温かな気持ちと幸せが膨らんでいく。
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