芸術の町ハドナ

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 美しく純粋な悲恋の話を題にした絵は、幻想的な雰囲気がある。逢瀬を重ねる湖で、寄り添って語らう二人を描いた物が多いが、中には最後の夜の情事を描いた物もある。  それらを鑑賞し終えて外に出る直前、ランバートは沢山の子供や人が集まっているのを見つけた。 「なんだろう、あれ?」 「行ってみるか」  人々のいるそこに近づいていくと、一般人参加の素描コンクールなる物が開催されていた。膝の上に乗る程度の画用紙と画板があり、炭とパンが用意されている。少額だせばそれらを受け取り、参加できるらしい。 「へぇ、面白そう」 「やっていくか?」  思わず身を乗り出して言えば、ファウストが何気なく言ってくれる。そして、ランバートが動くよりも前に近づいていって、画板と炭とパンを受け取った。 「いいの?」 「やりたいと顔に書いてあるぞ。久々に楽しんでみたらどうだ?」  優しいその声音と表情に、ランバートは少し照れながらも頷いた。  本当に久しぶりだった。純粋に絵を描くなんて。  晴れた冬の空の元、腰を下ろしてアングルを決めている。  美術館の前にある広場で遊ぶ子供達に決めたランバートは、素早く炭を走らせる。ジッとしていない子供達の楽しげな様子をそのまま描ければ。そう思って。 「上手いな」  隣に腰を下ろしたファウストが手元を覗き込んでくる。それが少し恥ずかしい。 「あんま見るなよ、恥ずかしいから」     
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