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「どうせ多くの人に見られるんだぞ」
「描いている課程を見られるのは、何というか…ムズムズする」
子供達の輪郭を描き出し、体の動きを付けて表情を付ける。雪合戦をする彼らは、例え雪玉がぶつかったとしても楽しげだ。
「十分に見られると思うが」
手元で仕上がっていく絵を興味深く見ているファウストを見上げ、ランバートはくすりと笑う。
「いつか、ファウストを描いてみたい」
「俺をか? 面白みもないだろ」
「そうでもないよ」
案外難しいと思う。長い黒髪に、黒い制服姿のファウスト。黒の濃淡でそれらを描き分ける事は案外難しくやりがいがある。
やがて手元の絵は仕上がった。
雪玉を投げ合う子供達は楽しさの中に勇ましさがあり、逃げる子供にはキャッキャとはしゃぐ軽やかさが、そして雪玉をぶつけられた子は背中を少し丸くしながらも楽しげに。
陰影をつけ、背景をつけ。そうして仕上がった絵は久しぶりにしては良く出来た気がする。
「できた。出してこようか」
「…色付ければもっといいのにな」
そんな事を、ファウストはぽつんと呟いた。
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