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美術館を出て軽く伸びをする。久しぶりに絵を描いたから少し凝った。でも、少しだけこの旅行でやりたい事が見えた。スケッチブックと鉛筆を買って、素描を描いてみようかと思った。
「あの受付の男、本当に惜しそうな顔をしていたな」
「俺は騎士でいいの」
「分かっているし、今から方向を変えられても困るが」
苦笑するファウストが、そっと腰に腕を回す。柔らかなその手が「離さない」と言っているようで、ランバートもそれに甘えていた。
と、その時だ。突如広場に少年の悲鳴が響いた。
「止めてください! お願い返して!!」
必死なその声にランバートとファウストの顔は騎士のそれになる。そうして視線を向ければ、十七歳くらいの少年の荷を何者かが奪い取ろうとしていた。
ランバートは飛び出そうとして、一瞬止まる。反省したばかりだ、勝手をしないと。
そうしてファウストを見れば、ファウストも頷いた。
躊躇い無く前に出られる。そうして少年に近づいたランバートを見て、荷を奪おうとしていた男が焦って強引にそれを奪い取り、少年を突き飛ばして馬車に乗り込み逃げていく。
ランバートは素早く馬車の番号を確認すると、倒れた少年を助け起こした。
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