5人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺の名は熊五朗。お嬢さん、あんた何で冬の時季に山へ入りなさった?
雪が降って一寸先も見えねぇこの山に。
熊は全部寝ている訳じゃあねんだ。冬眠に失敗したり、食料が底を突いた怒りと空腹の絶頂の熊だって中には居るんだ。
ま、嬢ちゃんが出逢ったのがオイラで良かったけどよ。
ほら、そこ峠の看板の近くで人間の死体を見ただろ?
腹腸を食い荒らされてやがった。
おっさんの肉なんざ美味くも何ともねぇのによぉ。
まったく、一歩早けりゃあ嬢ちゃんがあそこに転がってたかも知れねぇのによぉ。
え?何だって、病気のおっかさんの容態が悪化して隣村に居るお医者様を呼びに山を越えたかった!?
泣かせるじゃあねぇか。
ばっ、泣いてねぇよ!」
肉食獣の熊に掴まった少女はこんこんと説教を受ける。
事のあらましを説明すると熊は涙ながらに少女を住み処へ案内し、暖かいスープを振る舞うと言う何とも心暖まるファンタジーストーリーである。
「おい、志沼手!矢三寺!HR始まってるぞ!廊下に出ろ!」
最初のコメントを投稿しよう!