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永穂が白く線の細い首筋を覗かせて、優しそうに微笑めば大抵の人間は相好を崩し、言いなりになってくれる。案の定、彼もその一人だったようで、警戒もせずに無表情を崩してへたりと笑う。
「あぁ、初めてなんだ。どうやって遊べばいいか教えてくれない?」
「僕はハル。じゃあ、僕と遊ぼうよ」
永穂は今まで使ってきたように花の蜜みたいに甘く、誘蛾灯のように蠱惑的な顔をして相手を蕩けさせるように笑う。
「俺はアキ、よろしくな」
そう言ってグラスをちりんとぶつけ合う。今から自分が殺されることなんて微塵も思い描けないだろうと思うと笑いが止まらなかったが、それは気付かれないようにいつも通り腹の中に留める。
「僕はあんまりお酒飲めないから、飲める人って格好いいなぁ」
優しい鳶色の瞳をとろんと蕩けさせて、青年が飲んでいるグラスを指してそう言えば、恰好つけたい年頃の彼はちびちびと舐めていたウォッカを一気に煽る。
「そうなんだ? 俺、結構強いよ」
「僕が奢るからもっと飲んでよ」
普通の女性だったなら初対面の人間に何か奢られたら下心があるのではないかと思うが、この時の相手は華奢な青年にしか見えない永穂だ。特になんの警戒もなく次の酒を注文する。
「じゃあ、次ジンいこうかな」
「わー! すごーい! 僕は飲めないからスクリュードライバーお願いします」
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