受けが出て来るだけの話

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そうしてアキの前には冷凍庫で冷やされたジンと、永穂の前には可愛らしいオレンジ色のカクテルが用意される。 「アキ君は何してる人なの?」 永穂はカクテルをちびちびとのみながらそう尋ねると、よく冷えたジンを一気に煽ったアキは自慢げに話しを始める。 「俺はミュージシャンだよ」 「ミュージシャン? すごいね!」  心にもない言葉だったが、売れていないミュージシャンほど殺しやすい相手も少ないので、喜んだ感情だけは本物だった。 「へへ。地元でやってるのももう嫌になってさ、でこっち出てきたわけ」 もう一杯ジンを頼むとそれも一気に煽る。酒が強いというのは本当だったようだ。 「地元も悪くなかったんだけどさ、可愛い後輩とかいたし。でもやっぱビッグになりてえよな」 「後輩って彼女?」 「んや、男。可愛い顔のが多かったから何人か手だしちゃった」 悪びれもせずにそう笑うとまたジンを頼んで、一気に煽る。 「だから、そっちも結構自信あるよ」 にやにやと下心丸出しで笑うアキに、永穂は上手く罠にかかってくれたとほくそ笑む。 だから、適当に酔っ払ってきたところで耳元にそっと言葉を吹き込めば、いとも簡単に魚は釣れる。 「ねぇ、僕もアキくんので酔いたいな……」 「いいぜ、ホテル行こう」 「ううん……僕、外だとイマイチで……家、来れない?」     
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